ひとつひとつが手仕事
木と木を組み合わす神祭具にとって、鉋(かんな)は欠かせない1/100ミリを要求される場合もある。原木にふたつとして同じ木はないので、計りでしっかりと計算されるものでなく、職人の指触りや感性に頼るところが多い。職人ひとりひとりが自分の鉋と向き合い、互いのくせを幾度も削るたびに理想へ近づけていく。
神社の神殿扉や各種調度品、お神輿や外祭宮、神棚や御霊舎などに用いられる錺(かざり)金具。熟練された職人の技により大小さまざまな版を巧みにあわせて彫り込む錺技術は、強すぎず弱すぎず均一の深さに刻み込まれている。光をあてた時の美しく輝く反射光彩は職人の腕次第といっても過言ではない。
神棚の扉を開いた時に鳴る「ギィギィィ」という音。神社の神様をお祀りする本殿扉が開かれる時、同様の音が響く。その音色は神域との別世界の合図を意味する事や様々な説があるが、神様の存在性を奉る古来から続く人間の叡智かも知れぬ。その他に柱、床、屋根などにも意味をもち、古式の儀礼を重んじ美しく組み上げていく。
うるしの語源は「麗し(うるわし)」、「潤し(うるおし)」とも言われている。語源の通り、奥ゆきを感じる潤おしい艶は美しい。漆器で用いられる事の多い漆(うるし)は神祭具の中でも数多く使われている。お社、お神輿、獅子頭、調度品の数々…、特に獅子頭やお神輿などの凹凸の激しい部所に塗りムラなく同じ厚みを作りだす繊細な技術が問われる。